2015年3月5日
10年前に作ったこの義歯は使えている.最近新しく作った義歯の方があわなくて使えないので診てほしいと来院されました.
専門医の立場からご説明しましょう,義歯の安定を図るには,「支持,維持,均衡」の3要素が重要です.患者様方はあの先生は上手い,あそこは下手よなどと,職人芸的に語るかも知れませんが,まず3要素を考慮した設計をするということが重要なのです.例をあげれば,てこ,シーソーの原理と一緒です.支点があって力点があって,作用点があってと力のバランス(かみ合わせでかかる力ね)をとってやることが大切です.さらに,歯肉は柔らかいんですが,その下にある骨は硬くて,場所によって出っ張っていたり,へこんでいたり,歯茎も厚いところ,薄いところがあるから,かみ合わせたときにその厚み(専門的には被圧変位性といいますが)に応じて義歯が均等に沈下すればよいのです.この均等沈下によって吸盤のように吸い付く封鎖が得られるようになるのです(ちょっと難しくてごめんなさい).ですから,かめない入れ歯の方を見ると・・・・今時なんですが,補綴学会という義歯の専門学会も警鐘を鳴らしていますが,クラスプと呼ばれるバネが見えるのがいや,下あごの内側を義歯が覆うのがいやという要望にのっとって作られたものだと思います.しかし,これは,先にあげた,力のバランスや均等沈下の原理からは逸脱しているので,見かけ優先で機能は・・・.もう一症例写真を出しますが,最近,ノンクラスプデンチャーというバネ省いてできますよ.というのがあまりにも横行しているように感じています.原理原則を守って設計すれば,ノンクラスプデンチャーも悪くはないかもしれないですけど・・・.でも補綴専門医としては大いに抵抗はありますが・・・.
しかも,自費診療でしょうから,結局,保険でやっても自費でやっても同じと患者様をがっかりさせてしまうと思うのです.義歯でお困りの方,補綴専門医の当院にご相談ください.保険の義歯と,設計の自由度が大きい金属床義歯ではまったく違う装着感が得られるし,安心してかめる義歯が作ることができます.もちろん保険の義歯でも材質や設計等に制限はありますが,原理原則を守って作ります.